多店舗展開企業の廃棄物管理、本部はどこまで把握すべき?

多店舗展開企業の廃棄物管理、本部はどこまで把握すべき?

多店舗展開企業の廃棄物管理、本部はどこまで把握すべき?

複数の店舗や事業所を展開する企業では、廃棄物の管理を各店舗へ任せているケースが少なくありません。

日々の分別やごみ置き場の整理、回収業者への連絡まで、本部が直接対応する必要はないでしょう。

しかし、すべてを店舗任せにすると、契約内容や処理業者、処理費用、分別方法が店舗ごとに異なり、本部から全体像が見えなくなることがあります。

廃棄物の処理を業者へ委託しても、排出事業者としての責任がなくなるわけではありません。環境省も、不適正処理が判明した場合には、排出事業者が措置命令の対象となる可能性があると案内しています。環境省「排出事業者責任の徹底について」

本記事では、多店舗展開企業の本部が最低限把握しておきたい情報と、店舗との役割分担について解説します。

本部がすべての作業を行う必要はない

多店舗企業の廃棄物管理では、本部と店舗の役割を分けることが重要です。

本部が、すべての店舗の回収日時やごみ箱の配置まで細かく管理すると、担当者の業務量が大きくなります。

一方、契約や処理業者の選定まで各店舗へ任せると、会社として適正処理を確認できなくなります。

基本的には、次のように分けて考えます。

本部が担当すること 店舗が担当すること
全社共通の管理基準を定める 基準に沿って分別する
処理業者と契約内容を管理する ごみ置き場を整理する
許可証と処理ルートを確認する 回収状況を確認する
店舗別の排出量と費用を集計する 排出量や現場写真を報告する
マニフェストの運用状況を確認する 必要事項を記録する
問題発生時の対応方針を決める 異常やトラブルを本部へ連絡する

店舗は日常運用、本部は基準の設定と全体監視を担当するイメージです。

本部が把握したい7つの情報

本部では、各店舗の廃棄物管理について、少なくとも次の7項目を一覧化しておきましょう。

1.店舗の基本情報

最初に、廃棄物管理の単位となる店舗情報を整理します。

  • 店舗名
  • 所在地
  • 営業時間
  • 店舗責任者
  • 廃棄物担当者
  • 本部の担当部署
  • 開店日、閉店予定日
  • 商業施設への入居状況

同じ企業でも、路面店、商業施設内の店舗、オフィス、倉庫では、廃棄物の排出方法が異なります。

テナントとして入居している場合は、施設指定の処理業者や分別ルールがあるかも確認します。

2.廃棄物の種類と排出量

店舗から何が、どの程度出ているかを把握します。

  • 一般廃棄物
  • 廃プラスチック類
  • 金属くず
  • ガラスくず
  • 食品廃棄物
  • 段ボール、古紙
  • 蛍光灯、電池類
  • 粗大ごみ
  • その他の臨時廃棄物

すべての数量を毎日正確に計測する必要はありません。

月ごとの回収量、容器数、回収回数、請求数量など、継続して比較できる情報を決めておくことが重要です。

排出量を把握すると、急激な増加、回収頻度の過不足、店舗間の差などを発見しやすくなります。

3.収集運搬業者と処分業者

店舗ごとに、どの業者が回収し、どの施設で処理しているかを整理します。

  • 収集運搬業者名
  • 処分業者名
  • 回収する廃棄物の種類
  • 回収曜日と時間
  • 回収頻度
  • 使用する容器
  • 運搬先
  • 中間処理施設
  • 最終処分先
  • 再資源化先

請求書を発行している業者だけを把握していても、処理ルートを確認したことにはなりません。

回収後の廃棄物がどこへ運ばれ、どのような処分や再資源化が行われるかまで確認しましょう。

契約書と許可証は本部で管理する

各店舗が処理業者と個別に契約している場合でも、契約書と許可証は本部から確認できる状態にします。

契約書で把握したい内容

  • 契約先
  • 契約期間
  • 自動更新の有無
  • 委託する廃棄物の種類
  • 収集運搬先
  • 処分方法
  • 処理料金
  • 支払条件
  • 解約条件
  • 契約書の保管場所

許可証で把握したい内容

  • 許可業者名
  • 許可番号
  • 許可区域
  • 許可品目
  • 積替え・保管の有無
  • 処分方法
  • 有効期限
  • 変更・更新の状況

許可証を一度受け取っただけでは、継続的な管理にはなりません。

有効期限を一覧化し、期限前に更新状況を確認できる仕組みを作りましょう。優良産廃処理業者認定制度も、処理業者を評価する際の材料の一つになります。環境省「優良産廃処理業者認定制度」

店舗別の処理費用を把握する

本部では、会社全体の合計金額だけでなく、店舗別・品目別の費用を把握します。

  • 月額固定費
  • 収集運搬費
  • 処分費
  • 容器代
  • 臨時回収費
  • 時間外回収費
  • その他の追加作業費
  • 排出量
  • 回収回数
  • 1店舗当たりの月額
  • 重量や容量当たりの単価

同じ規模や業態の店舗でも、処理費用に大きな差が出ることがあります。

ただし、金額だけを比較して高い店舗を問題と判断してはいけません。

店舗の面積、売上、来店客数、営業時間、地域の処理相場、処理施設までの距離などを踏まえて比較する必要があります。

マニフェストの運用状況を確認する

産業廃棄物を委託して処理する場合は、マニフェストによって廃棄物の流れを確認します。

本部では、店舗ごとに次の内容を把握しましょう。

  • 紙と電子のどちらを使用しているか
  • 誰が交付・登録しているか
  • 廃棄物の種類と数量が正しいか
  • 運搬終了を確認しているか
  • 処分終了を確認しているか
  • 最終処分終了を確認しているか
  • 返送や登録が遅れていないか
  • 紙マニフェストを適切に保存しているか
  • 必要な報告が行われているか

紙マニフェストについては、排出事業者が交付した写しや処理業者から返送された写しを5年間保存する必要があります。環境省「産業廃棄物管理票制度の運用について」

紙と電子が店舗ごとに混在している場合は、本部が全店舗の状況を確認できる管理表を用意するとよいでしょう。

トラブルの発生状況を共有する

廃棄物管理の問題は、請求書やマニフェストだけでは把握できません。

店舗から次のような情報が本部へ上がる仕組みを作ります。

  • 回収漏れ
  • 回収時間の遅れ
  • ごみ置き場からのあふれ
  • 異物混入
  • 処理業者からの回収拒否
  • 容器の破損
  • 悪臭や害虫
  • 火災や発煙
  • 近隣からの苦情
  • 無断での回収条件変更
  • 契約にない追加料金

店舗がその場で処理業者と話し合って解決すると、本部には問題がなかったように見えてしまいます。

小さなトラブルでも記録し、同じ問題が複数店舗で起きていないかを確認しましょう。

本部へ報告する基準を決める

すべての出来事を店舗から本部へ報告させると、現場と本部の双方に負担がかかります。

本部へ報告する基準をあらかじめ決めておくことが有効です。

すぐに報告したい事項

  • 火災、発煙、漏えいが発生した
  • 廃棄物が回収されず保管場所からあふれそう
  • 行政や近隣から指摘を受けた
  • 契約外の廃棄物を処理業者へ渡してしまった
  • マニフェストの内容に誤りが見つかった
  • 処理業者から処分先の変更を伝えられた
  • 許可の取消しや行政処分が判明した

月次などで報告する事項

  • 排出量
  • 回収回数
  • 処理費用
  • 分別不良の件数
  • 臨時回収の回数
  • 現場写真
  • 軽微な回収トラブル

緊急報告と定期報告を分けることで、本部は重要な問題へ早く対応できます。

本部が管理表を作るときのポイント

店舗から集める情報は、同じ形式にそろえます。

店舗によって「袋」「箱」「㎏」「㎥」など単位が違う場合は、元の単位を残したうえで、比較可能な指標も設定します。

管理表には、次のような項目をまとめます。

管理区分 主な項目
店舗情報 店舗名、住所、担当者
廃棄物情報 種類、排出量、保管方法
業者情報 収集運搬業者、処分業者
契約情報 契約期間、更新日、処理単価
許可情報 許可区域、品目、有効期限
運用情報 回収頻度、曜日、容器
実績情報 月額費用、回収量、回収回数
問題情報 回収漏れ、苦情、改善状況

書類を保存するだけでなく、期限切れや異常値を見つけられる状態にすることが重要です。

情報を集めた後に確認したいこと

全店舗の情報を一覧化すると、これまで見えなかった問題が見つかります。

  • 同じ品目なのに単価が大きく異なる
  • 排出量に対して回収頻度が多い
  • 契約書が見つからない店舗がある
  • 処分業者を把握していない
  • 許可証の期限が切れている
  • 紙マニフェストの保管場所が不明
  • 回収漏れが特定の業者へ集中している
  • 分別方法が店舗ごとに違う
  • 臨時回収が毎月発生している
  • 排出量が急増している店舗がある

一覧化は、それ自体が目的ではありません。

見つかった問題を「法令・契約」「コスト」「現場運用」に分け、優先順位を付けて改善します。

一度に全店舗を整備しなくてもよい

店舗数が多い企業では、すべての情報を一度に集めようとすると、担当者の負担が大きくなります。

まずは、次の情報から整理するとよいでしょう。

  1. 店舗名と所在地
  2. 回収業者と処分業者
  3. 廃棄物の種類
  4. 契約書の有無
  5. 許可証の有効期限
  6. 月額費用
  7. 回収頻度

その後、排出量、処理ルート、マニフェスト、トラブル履歴などを追加していきます。

委託量が多い店舗、費用が高い店舗、過去に問題が発生した店舗から優先的に確認する方法もあります。

よくある質問

店舗ごとの処理業者が違っても問題ありませんか?

地域や施設の条件に応じて異なる処理業者へ委託すること自体は問題ではありません。ただし、本部が各業者の契約、許可、処理先、料金を把握できる状態にする必要があります。

商業施設指定の業者なら確認しなくてもよいですか?

施設指定の業者であっても、自社が排出事業者となる廃棄物については、契約関係や処理方法を確認します。誰が排出事業者となり、誰が契約やマニフェストを管理するのかを明確にしましょう。

本部でマニフェストをまとめて保管できますか?

紙マニフェストを事業場以外で保存することは可能ですが、行政による立入検査などの際に速やかに確認できる状態にしておく必要があります。店舗と本部のどちらで何を保管するかを決めておきましょう。

まとめ|本部は基準と全体像を管理する

多店舗展開企業の廃棄物管理では、本部がすべての現場作業を行う必要はありません。

本部が把握したいのは、次の情報です。

  • 各店舗で発生する廃棄物
  • 排出量と回収頻度
  • 収集運搬業者と処分業者
  • 委託契約書
  • 許可証と有効期限
  • 処理ルート
  • 店舗別の処理費用
  • マニフェストの運用状況
  • 回収漏れや事故などのトラブル

店舗には日常の分別や保管、本部には共通ルールの整備、契約・許可の管理、全店舗のデータ確認を担当させると、役割が明確になります。

エコビジョンでは、多店舗展開企業の廃棄物管理について、店舗情報、処理業者、許可証、契約書、処理費用、マニフェストなどの整理と一元管理を支援しています。

「店舗ごとに管理方法が違う」「本部では処理業者や費用を把握できていない」といった場合も、現在の管理状況を確認するところからご相談いただけます。